ととのう家
旗竿地のアプローチが表情を変える、
建築家が手がけたサウナのある住まい。
Designed by an architect,
this home with a private sauna transforms the approach through its flag lot into a unique spatial experience.
As the scenery unfolds step by step, changing light, carefully framed views,
and moments of calm create a welcoming journey home.
旗竿地のアプローチが表情を変える、建築家が手がけたサウナのある住まい。
Designed by an architect, this home with a private sauna transforms the approach through its flag lot into a unique spatial experience. As the scenery unfolds step by step, changing light, carefully framed views, and moments of calm create a welcoming journey home.
建築家コメント
住宅が建ち並ぶ旗竿地に計画した、ホームサウナのある住まいです。限られた敷地の中でも開放感を大切にし、サウナや水回りを一体化したスパエリアを設けることで、日常の中で心身を整えられるラグジュアリーな空間を実現しました。2階LDKは家具や窓、壁を一体的に計画し、光と広がりを感じられる開放的な空間に。毎日帰ることが楽しみになり、いつまでも過ごしたくなる暮らしを提案しています。
「ととのう」を暮らしの中心に据えるという発想
この住まいの根底にあるのは、サウナ、水浴び、休憩というルーティンがもたらす「ととのう」感覚を、日常に欠かせない習慣として住まいに組み込むという発想です。仕事や日々の暮らしで溜まった疲れを、誰にも邪魔されない自分だけの空間でリセットする。家という最も安心できる場所に癒しの装置を重ねることで、住まいそのものが心身の拠りどころになっていきます。単に設備としてサウナを置くのではなく、暮らし全体を「ととのう」ためにどう組み立てるか。その問いへの答えが、アプローチの一歩目から2階の窓辺まで、この住まいの隅々に息づいています。
一歩ごとに表情が変わる、旗竿地のアプローチ
計画地は、周囲を隣家に囲まれた旗竿地です。道路から敷地の奥まで、長さ16mを超える竿状の部分がアプローチとなり、家の姿は道路からは一部しか見えません。建築家はこの条件を制約ではなく演出の舞台と捉えました。金鏝で丁寧に仕上げられたコンクリート土間のアプローチを一歩一歩進むたびに、視界に入る建物の表情が移り変わっていきます。
素材感をコントロールして陰影を生み出すことで、玄関にたどり着くまでの時間そのものが、日常を切り替えるシークエンスとなっています。地面に据えられた小さな照明が夜のアプローチをやわらかく照らし、緑の植栽が足元に彩りを添える。仕事を終えて帰り着くまでのわずかな道のりが、心を静かにほどいていく助走の時間へと変わっていきます。
グリーンとベージュ、ふたつの素材が織りなす外観
外観は、縦のラインが美しいディープグリーンのガルバリウム鋼板と、ゆず肌のテクスチャーをもつベージュの塗り壁とのツートーンで構成されています。金属のシャープさと左官の温かみという対照的な素材が、箱型のシンプルなフォルムに奥行きのある表情を与えています。朝は塗り壁が陽光を受けてやわらかく発色し、夕暮れにはガルバリウムの縦のラインが濃い影を刻む。時刻や天候によって移り変わる二つの素材の表情が、この住まいの佇まいに豊かなニュアンスを重ねていきます。
窓は縦長のスリット窓を最小限に配置し、住宅密集地における視線とプライバシーに配慮しながら、閉じすぎない抜け感を保っています。サッシや玄関ドア、水切板金にいたるまでブラックで統一されたディテールが、ふたつの面材を静かに引き締め、つやのあるシルバーの屋根が空の色を映して周囲の街並みへ穏やかに溶け込んでいきます。
モルタルの土間とスケルトン階段が迎える玄関ホール
玄関の扉を開けると、モルタル仕上げの土間が広がるホールが迎えてくれます。ブラックウォルナットのフローリングへと素材が切り替わる床の構成が、外から内への移ろいをやさしく橋渡しします。
ホールの中心には、アイアンのささら桁に木の踏板を重ねたスケルトン階段。縦長の窓から注ぐ光が段板の隙間を透過して土間に落ち、時間とともに移ろう陰影がコンパクトな空間に立体的な広がりを生み出しています。広々とした土間は自転車やアウトドア用品を持ち込める余白としても機能し、観葉植物を並べて小さな温室のように楽しむこともできる、暮らしの自由度を広げる場所です。
木の香りに包まれるプライベートサウナ
ホールの先に控えるのが、この住まいの主役であるプライベートサウナです。木の質感に包まれた室内には、ベンチの下からやわらかな間接照明が灯り、サウナストーンを積んだストーブが静かに熱を蓄えます。壁には砂時計、傍らにはバスローブ。温度と時間を操作できるコントローラーが壁面に備わり、その日の体調や気分に合わせて自分だけの入り方を組み立てられます。
ガラスの扉越しにテラスの光を感じられる開放的なつくりも相まって、ホテルのスパを思わせるしつらえが、日々の疲れをやさしくほどいていきます。照明を絞り、石に水を落とす音だけが響く時間。自宅にいながら、誰にも邪魔されない自分だけの聖域がここにあります。
無駄のない動線が「ととのう」を深める
サウナを心から楽しむために、建築家が最も重視したのが前後の動線です。脱衣からサウナ、水浴び、そして外気浴へ。洗面・脱衣室とサウナ、外部テラスがひと続きにレイアウトされ、火照った身体のまま迷いなく次の場所へと移れます。無駄なストレスがないからこそ、ととのう時間はいっそう深まる。
水廻りのアクセスゾーンとスパエリアをひとつにまとめたことで、限られた面積のなかにラグジュアリーな非日常感が生まれています。造作の洗面カウンターやタイル貼りの床、木製ブラインドといった素材の選択も、スパエリア全体のくつろぎを静かに支えています。
空と光だけを感じる、外気浴のためのテラス
スパエリアと大きな窓でつながるテラスは、木製の目隠しフェンスに囲まれた外気浴のための場所です。板の隙間から漏れる光が刻々と表情を変え、ウッドデッキに柔らかな縞模様を描きます。外部シャワーで汗を流し、チェアに身を沈めれば、住宅密集地にいることを忘れるほどの静けさ。
スパエリアと大きな窓でつながるテラスは、木製の目隠しフェンスに囲まれた外気浴のための場所です。板の隙間から漏れる光が刻々と表情を変え、ウッドデッキに柔らかな縞模様を描きます。外部シャワーで汗を流し、チェアに身を沈めれば、住宅密集地にいることを忘れるほどの静けさ。
L字に連なるカウンターが空間をひとつにつなぐ
階段を上がると、約20帖のLDKが広がります。この空間の要となるのが、キッチンカウンターからリビングのベンチへとL字型に連なる造作です。
調理をする場所、食事をする場所、腰かけてくつろぐ場所。本来なら家具ごとに分断されがちな役割を、壁に沿って伸びる一本のラインがゆるやかに束ね、視線が途切れることなく奥へと導かれていきます。
調理をする場所、食事をする場所、腰かけてくつろぐ場所。本来なら家具ごとに分断されがちな役割を、壁に沿って伸びる一本のラインがゆるやかに束ね、視線が途切れることなく奥へと導かれていきます。
ハイサイドライトと間接照明が描く、時間の移ろい
壁の高い位置には、3連のハイサイドライトが横一列に並びます。住宅密集地でありながら隣家の視線を気にすることなく、空の光だけをたっぷりと室内へ導く窓の配置です。
日中は白い天井が光を受けて空間全体を明るく満たし、夕暮れには折り上げ天井にまわされた間接照明が灯り、包み込むようなあたたかい表情へと切り替わります。
勾配のついた天井が光を奥までやわらかく運び、同じ空間が一日のなかで何度も表情を変えていく。カーテンを閉める必要のない暮らしは、それだけで開放感を生む。光の設計が、このLDKの心地よさを根底から支えています。
ブラックウォルナットが導く、落ち着きのトーン
足元には、ブラックウォルナットの無垢材が貼られています。深みのある木目が空間全体のトーンを引き締め、グレージュのキッチンやブラックのレンジフード、黒いフレームの家具と響き合いながら、ホテルライクな落ち着きをかたちづくっています。
人造大理石の黒い天板をもつキッチンは、リビング側からは家電や手元が見えないよう計画され、生活感を抑えたすっきりとした佇まいを保ちます。パントリーの黒い可動棚が収納力を受け持ち、美しさと実用性を両立させています。
ワークコーナーとフリールーム、暮らしにそっと寄り添う居場所
LDKの窓辺には、景色を眺めながら作業ができるワークコーナーが造作されています。在宅での仕事や子どもの学習など、家族の「ちょっとこもりたい」に応える場所です。LDKと同じ空間にありながら、視線の向きを変えるだけで自然と集中モードに切り替わる、程よい距離感が心地よい設えです。
さらに隣接するフリールームは、来客時のゲストルームにも、趣味の部屋にも姿を変える自由な空間。ロールスクリーンで仕切ればプライベートな個室に、開け放てばLDKと一体の大空間になります。暮らしの変化に合わせて役割を変えられる余白が、この住まいの長い時間を支えていきます。
演出の舞台へと転換した「ととのう家」
旗竿地という敷地条件を活かし、サウナを暮らしの中心に据えた設計計画。玄関からサウナ、水風呂、外気浴テラスへと続く動線を計画し、自宅で本格的な“ととのう”時間を楽しめる空間を実現しました。2階には光が差し込む開放的なLDKを配置し、L字カウンターが家族の時間をつなぎます。癒しと日常が自然に調和し、毎日帰ることが楽しみになる住まいとなっています。




