リビングルームの風景

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アートと共に暮らす

スキップフロアでつくる、余白のある暮らし。
立体的な構成で暮らしが広がる、
ワンルームのような開放的な住宅。

Defined by a skip-floor layout, this home creates a sense of openness and spatial breathing room.
Its layered design allows everyday living to expand within a fluid, one-room-like space.

スキップフロアでつくる、
余白のある暮らし。
立体的な構成で暮らしが広がる、
ワンルームのような開放的な住宅。

Defined by a skip-floor layout, this home creates a sense of openness and spatial breathing room. Its layered design allows everyday living to expand within a fluid, one-room-like space.

住まいの印象は、広さや間取りだけで決まるものではありません。素材の質感や光の入り方、視線の抜けといった要素が重なり合うことで、空間の心地よさは大きく形づくられます。

焼杉の外壁や連続する木梁、緻密に計画された開口部、そして造作家具によって、静かで奥行きのある空間を実現しました。また、住まいに求められる価値が多様化する中で、「どのように暮らすか」という視点を重視。スキップフロアと吹抜けによる立体的な構成により、ワンルームのような一体感を持ちながらも、それぞれに異なる居心地を備えた住まいとなっています。

建築家コメント

田園風景が広がる土地に、家庭菜園とアートコレクションを楽しむ住まいを計画。シンプルな四角いボリュームの外観は、焼杉と芝屋根によって素材の力を引き出し、周囲の風景の中で静かに存在感を放ちます。

内部は、高さの異なる2つの床レベルと鉄骨階段によって、1階と2階がゆるやかにつながる構成に。1階は大きな作品を引き立てるため、明るさを抑えた落ち着きのある空間としました。2階は緑化されたバルコニーと大きな開口により、空や風景を感じられる開放的な場所としています。

自然とアート、それぞれの魅力を引き立てながら、静かに豊かさを深めていく住まいです。


焼杉と木がつくる、重心のある空間

外観に採用された焼杉は、黒く引き締まった表情によって建築全体に強い存在感を与え、周囲の風景に溶け込みながらも、確かな輪郭を持つ外観は、住まいのアイデンティティを明確に示しています。

一方、内部に足を踏み入れると、空間は一転して温かみのある木質空間へと切り替わります。床や造作家具に用いられた濃色の木材が、空間に落ち着きと深みをもたらしています。そこに白い壁面が組み合わさることで、重くなりすぎず、適度な軽やかさも保たれています。

さらに、中央のコア部分に用いられたグレーの左官仕上げが、空間にもうひとつの層を与えています。このグレーのボリュームが、空間を緩やかに分節しながら、全体のバランスを整える役割を担っています。素材のコントラストによって、視覚的にも機能的にも整理された空間が実現されています。

構造をそのまま魅せる、連続する木梁の天井

この住宅を特徴づけるもうひとつの要素が、連続する木梁による天井デザインです。一定のピッチで並ぶ梁は、空間にリズムを与えると同時に、視線を奥へと導く役割を果たしています。

梁を濃い色で仕上げることで、水平方向の広がりが強調され、吹抜けを含めた空間全体に一体感が生まれています。また、構造体をそのまま意匠として見せることで、建築の力強さや素材の質感がダイレクトに伝わります。

天井という要素は、意識されにくい部分でありながら、空間の印象を大きく左右します。その天井を積極的にデザインすることで、単なる居住空間を超えた“場の質”を高めています。

視線と光をコントロールする開口計画

開口部の計画も非常に緻密です。大きな窓によって外部の風景を取り込みながらも、単に開放するのではなく、視線の高さや方向をコントロールすることで、空間の質を高めています。

上階のリビングでは、大開口から遠景が広がり、空や街並みが日常の風景として取り込まれています。一方で、足元の視線は適度に遮られており、プライバシーが確保されています。このバランスによって、開放感と安心感が両立されています。

また、ハイサイドライトのような高い位置の窓からは、柔らかな光が差し込み、時間の移ろいを感じさせます。直接的な光だけでなく、反射や陰影を含めた光の扱いが、空間に豊かな表情を与えています。

建築に溶け込む、造作収納とミニマルな設え

収納や家具は、空間に“置かれる”のではなく、“組み込まれる”ように設計されています。壁面と一体化した収納や、素材を揃えた造作家具によって、視覚的なノイズが抑えられ、空間の純度が保たれています。

ウォークインクローゼットやキッチンも、既製品の集合ではなく、空間に合わせてデザインされたものです。特にキッチンは、低めの重心と水平ラインを意識した設計により、空間全体のバランスを整える存在となっています。

このようなミニマルな設えがあるからこそ、アートや光、素材の質感といった要素が際立ち、住まいの魅力がより引き出されています。

立体的に広がる、スキップフロアの住空間

この住宅の大きな特徴は、スキップフロアによって構成された立体的な空間です。フラットなワンフロアではなく、床の高さをずらすことで、それぞれの場所に異なる役割と居心地が与えられています。リビング、ダイニング、寝室といった機能は緩やかにつながりながらも、完全に一体化することはなく、適度な距離感を保っています。

中心には大きなボリュームのコアが配置され、その周囲を回遊するように動線が計画されています。この構成により、視線が縦横に抜け、空間全体に広がりを感じさせます。階段も単なる移動手段ではなく、視線を導く装置として機能しており、上下階をつなぐ重要な要素となっています。

また、上階に設けられたセカンドリビングは、下階と視覚的につながりながらも独立した居場所として成立しています。この“つながりすぎない関係性”こそが、この住宅における心地よさの本質といえるでしょう。

吹抜けがもたらす、余白と開放感

スキップフロアと並んで重要なのが、吹抜けによる空間の広がりです。天井高さを確保することで、床面積以上の開放感が生まれ、住宅全体にゆとりをもたらしています。

特に印象的なのは、吹抜けを単なる“空間の抜け”として扱うのではなく、「余白」として機能させている点です。視線が上下に抜けることで、空間に奥行きが生まれ、時間の流れすらゆったりと感じられます。さらに、自然光が上階から下階へと落ちてくることで、時間帯によって異なる表情を見せるのも魅力のひとつです。

このような構成により、空間は単なる居住の場を超え、心地よく過ごすための“環境”へと昇華されています。

アートを引き立てる、静かな空間設計

この住宅では「アートと共に暮らす」というテーマが明確に設定されています。壁面に設置された作品は、空間のアクセントとしてだけでなく、暮らしの中で自然に視界に入る位置に配置されています。

ここで重要なのは、空間そのものが過剰に主張しない設計であることです。白を基調とした壁面やシンプルなディテールによって、アートが引き立つ余白が確保されています。

一方で、木質の素材や陰影のある天井が加わることで、単調にならず、空間全体に深みが生まれています。

つまり、建築とアートが競合するのではなく、互いを引き立て合う関係が丁寧に構築されているのです。

スキップフロアと吹抜けを組み合わせた立体的な空間構成は、単なる開放感にとどまらず、多様な居場所と豊かな余白を生み出しています。そこにアートという要素が加わることで、住まいはより感性に寄り添う空間へと変化しています。機能や効率だけでは測れない「心地よさ」を実現するためには、空間のつながりや距離感、そして余白の扱いが重要であることを、この住宅は示しています。